『トレンケ・ラウケン』公開を記念してラウラ・シタレラ監督の全長編作品を特集上映します。エル・パンペロ・シネ常連の役者やスタッフとシタレラが作り上げたこのサーガでは、個々の作品の謎めいた魅力がきらめきつつ、すべての物語が奇跡的に連動していきます。『トレンケ・ラウケン』を見る前もしくは見た後に、シタレラたちが織りなす壮大な世界の秘密にもっと近づいてみませんか。

ラジオのクイズコンテストの懸賞で、ブエノスアイレス近郊オステンデのホテルを訪れたラウラ。だがリゾートはシーズンオフ。後から合流する彼氏を待つ間、彼女は2人の若い女を連れた中年男を観察しはじめる。男の奇妙な態度に好奇心をくすぐられ、密かにくり広げられているかもしれない中年男をめぐる物語を解き明かそうと想像をふくらませてゆくが…。ヒッチコックやロメールへ目配せをしつつ、日常に潜むフィクションにのめり込む女性を描いた監督デビュー作。シタレラは『トレンケ・ラウケン』に連なるサーガの一篇であり、異なる世界にいる同じ登場人物の物語だと語っている。

アルゼンチン/ 2011 年 / 85 分 / スペイン語 / DCP

原題:Ostende

監督:ラウラ・シタレラ
製作:マリアノ・ジナス
撮影:アグスティン・メンディラルス

録音:ロドリゴ・サンチェス・マリニョ
編集:アレホ・モギシャンスキー

音楽:ガブリエル・チュフニク

出演:ラウラ・パレーデス、フリアン・テジョ、サンティアゴ・ゴベルノリ、デボラ・デフティアル、フェルナンダ・アラルコン、フリオ・シタレラ

2011年ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭アルゼンチンコンペティション部門 アルゼンチン作家協会スペシャルメンション

2011年SANFIC Festival Internacional de Villa de Leyva (Colombia)

2011年ロンドン国際映画祭 London Film Festival 2011

2011年ヴェネツィア国際映画祭

2011年ローマ国際映画祭

2012年ミュンヘン国際映画祭

ひとりの女性がたくさんの犬に囲まれて、平原を横切っていく。彼女はブエノスアイレス郊外の空き地に自らの手で建てた小屋で、10匹の犬とともにひっそりと暮らしている。金も使わず、言葉も喋らず、社会からはみ出たような謎の女。だが無秩序に肥大化した大都市の周縁には、彼女のような謎が謎のままで存在できる世界が広がっている。狩りに出て、食事をし、水辺を眺め、やがて死ぬ。そんな原初的な自由が許された世界の、彼女は名もなき観察者なのかもしれない。主人公を演じるのはエル・パンペロのマリアノ・ジナスの姉ベロニカ・ジナス。ベロニカの発案をシタレラと共同監督した作品。

アルゼンチン/ 2015 年 / 98 分 / スペイン語 / DCP

原題:La Mujer de los Perros
監督:ラウラ・シタレラ、ベロニカ・ジナス
製作:エル・パンペロ・シネ

撮影:ソレダ・ロドリゲス
編集:イグナシオ・マスジョレンス
音響:マルコス・カノーサ

音楽:フアナ・モリーナ

出演:ベロニカ・ジナス、フリアナ・ムラス、ヘルマン・デ・シルバ、フアナ・サラ

2015年ロッテルダム国際映画祭コンペティション部門正式出品

2015年ブエノスアイレスインディペンデント国際映画祭国際コンペティション部門主演女優賞

2015年アテネ映画祭主演女優賞

2015年BFIロンドン映画祭

2015年ヴェネツィア国際映画祭

もしも、詩と映画を対峙させたら何が語られるのか?
フアナ・ビニョッシという詩人が死んだ。彼女の詩を世に遺したいと願う若い詩人メルセデス・ハルフォンは、ラウラ・シタレラたちとビニョッシについての映画を作ることにする。遺品を整理しながらビニョッシの詩に向き合う女性たち。プロットもなくはじまったこのプロジェクトは、彼女たちが予想だにしなかった複雑で繊細なものへと進化していく。『トレンケ・ラウケン』と同時期に制作された今作では、アレクサンドラ・コロンタイや書物への書き込みといった共通のエピソードが語られ、シタレラ作品の最重要テーマである「共同体への希求」が、軽やかに切実に記録されている。

アルゼンチン/ 2019 年/ 90 分 / スペイン語 / DCP

原題:Las Poetas Visitan a Juana Bignozzi

監督:ラウラ・シタレラ、メルセデス・ハルフォン
製作:エル・パンペロ・シネ、メルセデス・ハルフォン
撮影:イネス・ドゥアカステラ、アグスティン・メンディラルス

編集:ミゲル・デ・スビリア、アレホ・モギシャンスキー
音響:マルコス・カノーサ

出演:マルティン・ロドリゲス、 マルセリーナ・ハルマ、マルティン・ガンバロータ、グラシエラ・ゴルドチュルク、アナ・ポルア

2019年マル・デル・プラタ国際映画祭アルゼンチン映画コンペティション最優秀監督賞

2020年ライプツィヒ国際ドキュメンタリー・アニメーション映画祭銀の鳩賞